SWEアジア委員会(SWEA)総会報告

香港国際ワイン&スピリッツフェア マスタークラス・セミナー
「日本のワインと中国のワイン」Grace meets Grace

2011年11月3日から5日にかけて、第4回「香港国際ワイン&スピリッツフェア」が開催され、30か国から700を超える出展があり、20,000名を超えるバイヤーを世界中から迎えました。フェア中は、各種イベントも開催され、ワインコンペティション、ワインセミナー、ワインガラディナー等も行われました。

SWEのアジア委員会では、昨年からこの期間中にアジア・カンフェレンスを開催しており、総会や支部持ち回りのセミナーに加え、認定試験も実施しています。

アジア最高のワインのセミナー「日本のワインと中国のワイン」を開催

HKTDCマスタークラス「日本のワインと中国のワイン(Grace meets Grace)」
筆者の左が中央葡萄酒の三澤社長、右が中国Grace Vineyardのライスナー社長

さて、今回の目玉は何と言っても、アジア最高のワインのセミナー「日本のワインと中国のワイン」を開催できたことです。この企画は2年前から温めていたもので、それぞれの国外ではあまり知られていない日本と中国のトップクラスのワインを、広く世界のバイヤー、ソムリエ、ジャーナリストの方々にアピールしようとするものです。

開催に当たってのワイナリー選びですが、偶然にも両国のトップワイナリーの中に、同じブランド名を共有するものがあり、一も二もなく「グレース(Grace)」に決定しました。したがって、セミナーの副題は「Grace meets Grace」です。

日本の中央葡萄酒は、ご存じのとおり日本一の生産量を誇る山梨県のワイナリーであり、ワインは多くの受賞歴を持ち、また現在その一部は世界のワイン流通の中心である英国市場に輸出されています。

一方、中国のGrace Vineyardは、生産量や自社畑面積は中央葡萄酒の何十倍規模ですが、歴史的には1997年創立であり、1923年創立の中央葡萄酒に比べると、まだまだ新参ワイナリーの感があります。

両者をコラボレーションさせるため、その最終準備として2011年5月に東京のSWE例会で、中国ワインのセミナーとGrace Vineyardの試飲会を開催し、SWE香港支部長でシンガポールのソムリエ協会会長でもあるトミー・ラム氏を招聘し講師をして頂きました。

ほぼ初めて聞く中国でのワイン生産の実態とともに、従来の中国ワインの品質を大きく凌駕したGrace Vineyardのワインに、参加者一同驚嘆の声を上げていました。

また、香港側の関係者一同が8月に来日、ともに中央葡萄酒を訪問し、畑や醸造所を見るとともに、今回の使用ワインを試飲のうえ決定しました。

マスタークラス・セミナーの模様

セミナーの講師(左から):翌日行われたGrace Dinnerにて
中国Grace Vineyard社長:ジュディ・ライスナー氏
セミナー司会:トミー・ラム(SWEアジア副委員長)(シンガポールソムリエ協会会長)
モデレーター:ワイン誌「ワインナウ」主筆:ラウ・チスン氏
セミナープロデューサー・キーノートスピーカ―:児島速人(SWE理事・アジア委員長)
日本・山梨中央葡萄酒【グレースワイン】社長:三澤茂計氏

さて、セミナーは英語を基本語として行われ、同時通訳で広東語に翻訳されます。モデレーターは、香港で最大の発行部数を誇るワイン誌「Wine Now」の主筆ラウ・チスン氏、私がセミナープロデューサーということでキーノートスピーカーを務め、両ワイナリーの社長がそれぞれのワイナリーと試飲ワインを紹介しました。

まずは中国のGrace Vineyardの顧問も務めるラウ氏が、現地について簡単に説明しました。現在中国では、東は山東半島から西は新疆ウィグル自治区まで、広く全国でワイン造りが行われていますが、Grace Vineyardは山西省太原の近く、黄河の左岸、ちょうど北京市と西安市の中間、どちらからもおよそ300qの距離にあるとのこと。続いて、児島が上記の内容で、このセミナーのプロデュースの経緯、中央葡萄酒の紹介と山梨県の産地紹介を行いました。

中央葡萄酒の三澤氏は、一部英語も交えワイン造りおよびワイナリーを、パワーポイントを使って詳しく説明しました。 日本のおける畑の土地所有形態や輸出の困難さ、温暖多湿な気候下におけるブドウ造りの苦労、ワイン造りのこだわり等が理解できましたが、中でもアジアの気候に対応したレインカットや各種の灌漑方法は、中国側からも高い注目を浴びていました。

最後に中国Grace Vineyardのジュディ・ライスナー氏が登壇し、同じくパワーポイントで自社の畑およびワイナリーを紹介しました。太原における自社畑200haそしてその他にも100ha程の畑を持つとのことで、法令の違いはあるものの、わずか13.6haの自社畑の中央葡萄酒との違いを見せつけられます。オーストラリアからコンサルタントを毎年6か月招聘し、あとはマレーシア人の醸造長がワイナリーを管理します。

Grace Vineyardの中心地である太原は、年間平均気温9.8℃ですが気温の日較差、年較差が大きく、年間降水量450mm、平均標高900mという極東の地では珍しい乾燥した大陸性気候で、水捌けの良い肥沃な砂地土壌という理想的なワイン用ブドウ造りの条件を備えています。

今まで、国内消費を中心に生産が行われてきた両ワイナリーですが、現在中央葡萄酒は英国市場への積極的なアプローチとともに、東南アジア市場にも徐々に浸透を図っており、今回の香港でのセミナーもそのきっかけにできればとの思いがあります。 一方、Grace Vineyardも徐々に輸出を考えており、近々日本にも輸出が始まるとのことです。

Grace meets Grace Dinner開催

マスタークラス・セミナー 試飲ワイン(右から)
中央葡萄酒 グレース甲州・菱山畑2010
中央葡萄酒 キュヴェ三澤甲州・鳥居平畑プライベートリザーヴ2010
中央葡萄酒 キュヴェ三澤ルージュ2008
Grace Vineyard(グレースヴィンヤード) Tasya’s Reserve Chardonnay 2009
Grace Vineyard(グレースヴィンヤード) Tasya’s Reserve Cabernet Sauvignon 2008
Grace Vineyard(グレースヴィンヤード) Chairman’s Reserve 2008

翌日の夜、香港の老舗レストランでミシュランの1つ星にも輝いている「繼L<ヨンキー>」にて、再びGrace meets Graceと銘打ったディナーが70名の賓客を迎えて開催されました。

ディナーでは、セミナーで出されたワインとは別の、スーパープレミアムクラスを含む5種類ずつのワインが出され、ヨンキーの料理と合されました。【ワインリスト別添】

セミナーそしてディナーを終えて感じたことは、世界のワインに旧世界ワインと新世界ワインがあり、それぞれに特徴の違いが対比されるように、アジアの中にも同じ小宇宙があるのではないかということでした。

日本のワインは多雨な気候のせいか、凝縮感やアルコールの高さには欠けるものの、非常にデリケートであり、同じく繊細な日本料理によく合います。 フルーツ控えめな特徴の旧世界ワインに通じるものがあり、特に甲州の樽熟成をしないタイプは、繊細さを貴ぶヨーロッパからのマスターオブワインやマスターソムリエを含む専門家たちに好評でした。 

一方、アメリカの専門家は、「甲州は水のようだ」と言うSWE会長のコメントにも代表されるように、凝縮感には必ずしも満足していなかったようです。 一方、中国のワイン、特にGrace  ineyardのある太原は、アジアとしては理想的なワイン用ブドウ造りの条件を備えています。造られるワインもアジアの中ではアルコールが比較的高くフルーツの凝縮した、どちらかというと新世界タイプのワインであると言えます。

ただし、インパクトが強いからと言って、すべてが良いわけではなく。ヨーロッパの参加者からは必ずしも日本に比べて高評価を得たわけではありません。参加者の出身地による評価ポイントの違いを、あらためて見せつけられた思いでした。

そしてもう一つ確かなことは、日中いずれのワインもが、欧米の専門家に対しアジアワインの進歩を多少なりとも印象付けたように思います。

さらにワインエデュケーターの立場で見るならば、世界のワイン教本の中でいまだ確固たる位置づけがなされていない「アジアのワイン」について、研究のメスが入る良いきっかけの一つとなったような思いで、香港を後にすることができました。

Grace meets Grace Dinnerで出されたワイン。(以下がそのラインアップ)

■日本:中央葡萄酒のラインアップ
グレース ロゼ2010
グレース甲州茅が岳2010
グレースセレナエステートシャルドネ2010
グレースセレナエステートメルロ2010
グレースキュヴェ三澤ルージュ
プライベートリザーヴ2008

■中国Grace Vineyardのラインアップ
Grace Vineyard Select Rose 2009
Grace Vineyard Symphony 2009
Grace Vineyard Premium Chardonnay 2009
Grace vineyard Deep Blue 2008
Grace Vineyard Chairman’s Reserve 2008

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